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臨床試験の分散化:障壁緩和と導入への推進

著者: JOHN HALL, SVP, BUSINESS DEVELOPMENT, EMEA & APAC

CluePoints 社 EMEA & APA SVP 担当である John Hall が、 分散型臨床試験の成長を促進する市場要因と、 この機会を完全に捉えるために取り除く必要のある障害について詳しく説明いたします。

 

分散型臨床試験導入への加速化

現在、分散型臨床試験(DCT)はCOVID-19も引き続き大変興味深いトレンドとなっています。

COVID-19の大流行により、バーチャルまたは分散型臨床試験は、臨床試験実施において、現在より患者中心のアプローチをとり、プロセスに利便性と柔軟性をもたらし、参加者が日々快適な環境から試験に参加できることが可能となっています。

パンデミック中に発表されたオラクルとインフォーマ・ファーマ・インテリジェンスの最近の調査では、76%の研究者がCOVID-19パンデミックの際に分散型アプローチを実施したと回答し、38%が現在、試験の半分以上が分散型であると回答しています。[1]

さらに、GlobalDataがClinical Trials Arenaで発表した最近の分析では、分散型試験コンポーネントの最新の急速な採用が強調され、 2020年には、673件の介入型医薬品試験が、臨床登録プロトコルの分散型コンポーネントとバーチャルコンポーネントに言及しています。 2022年にはDCTの導入がさらに勢いを増し、約1,300件の介入試験がバーチャルおよび/または分散型コンポーネントで開始されると予測され、2020年から93%の増加となっています。

もちろん、DCTには様々な技術やサービスが盛り込まれますが、共通コアとなるコンポーネントには、eConsent、ePRO、コネクテッドウェアラブル、医療機器、遠隔医療が含まれます。 また、在宅医療、地域の薬局サービス、参加者の自宅に治験薬を供給する新しいサービスも含まれます。 GlobalData社実施によるClinical Trials Arenaに掲載の最近の分析では、遠隔医療が分散化の要素として最も頻繁に使用されており、自宅または代替施設が最も一般的ではないことがデータとして発表されています。

成長を牽引する市場要因

では、この革命の原動力は一体何なのでしょうか。COVID-19の大流行がDCTの採用を加速させたことは確かですが、その際、バーチャル化によって患者と医師の体験をいかに改善できるかが証明されたことに起因すると考えられます。
同時に、消費者と医師間でのデジタルヘルス技術に対する快適さが増していることが、このモデルの運用とロジスティクスの実装を助け、臨床試験体験に対する参加者の期待を高めていまことが分かります。

最終的に、継続的な成長の主な理由の1つは、このモデルの多くの利点に対する認識が高まっていることです。 これには、患者の募集、維持、コンプライアンス、多様性の向上、試験の効率と回復力などが含まれます。

まず、分散型アプローチによって参加者の負担が軽減され、より患者中心の試験設計が可能になります。これは、特に、個別化医療や希少疾患治療によって参加可能な被験者の数が減少する中、参加登録と維持という長年の問題を克服するために非常に重要な点となります。

DCTは、より多様なコホートへのアクセスを提供することで、患者集団全体における治療の安全性と有効性を確保するのに役立ち、さらに、より見やすく使い易いアプリケーションやデバイスを活用することで、コンプライアンスとプロトコルの遵守を向上させることが可能となっています。

また、デジタル技術を活用することで、より頻度の高いデータ収集が可能となり、従来の定期的な訪問では見逃されがちな疾患の兆候や症状の変化を捉えることができます。 神経学などの特定の治療分野では、スポンサーがより客観的、定量的、かつ継続的に病気の兆候や症状を測定する方法を利用することが現在可能となっています。

専門知識の結集

製薬・バイオファーマ業界がこの新しい世界を受け入れようとする中、専門技術プロバイダーはそのニーズに応えるため、成熟した、柔軟で堅牢なソリューションの構築に奔走しています。 その中には、電子カルテの統合により、患者とのデジタルエンゲージメントを実現し、治験参加者から直接データを収集するシステムも含まれています。

CROはまた、在宅医療やその他の地域サービス(薬局や画像診断など)をモバイルヘルス、ウェアラブル技術、コネクテッドヘルスのプラットフォームと組み合わせ、よりシームレスで完全なサービスをスポンサーに提供しようと努力を重ねています。

製薬会社も市場の成長を牽引しており、社内にDCT専門家グループを設立し、この新しい臨床試験実施モデルを大規模に運用するために必要な技術やプロセスに投資している現状です。

同時に、規制環境の変化により導入が簡素化され、このモデルが主流となりつつあります。例えば、COVID-19の期間中、FDAやEMAなどの機関は、進行中の試験実施を可能にする方法に関する新しいガイダンスを迅速に発行しました。 これには、有害事象を収集し、継続的な医療とモニタリングを確保するための遠隔医療や、参加者への治験薬の直接供給、訪問看護などが含まれています[2], [3]

さらに、FDAはDigital Health Center of Excellenceを設立し[4]、Software-as-Medical-Deviceに関するガイドラインを変更しました。 これは、デジタルヘルス技術(モバイルヘルス機器、Software as a Medical Device(SaMD)、ウェアラブルなど)を医療機器として使用する際の進歩や、新規医療製品の調査を支援するものとなっています。FDAはまた、臨床結果評価(COA)適格性評価プログラム[5]を立ち上げ、DCTアプローチによって提供される新しい結果評価を、使用するために適格とすることができるメカニズムを提供しています。

このような動きにより、新しいデータソースの遠隔キャプチャや病気の兆候や症状の測定のためのツールやデバイスの数が増え、より広範な使用への確かな道筋が作られています。デジタル医学協会が最近行った、企業がスポンサーとなった試験で使用されているデジタルエンドポイントの数と種類を記録する取り組みが、この採用の増加をさらに証明していることとなります[6]

共通の命名定義およびベストプラクティスの確立

これまで、実装に関しては主に自社内やベンダー固有のアプローチで設計されてきましたが、現在では業界団体、ワーキンググループ、官民パートナーシップにより、共通の定義が策定されつつあります。この重要な作業により、さらなる導入が可能になりつつあります。

例えば、ACRO(Association of Clinical Research Organizations)は、専門家によるワーキンググループを立ち上げ、採用の障壁を調査し、組織がDCTアプローチを実施するのに役立つDCTツールキットをリリースしました[7]。さらに、Clinical Trial Transformation Initiative (CTTI) は、DCTの試験デザインと実施の特定の側面に関連する物流、法律、規制上の懸念に対処するためのアドバイスを作成しています[8]

新しいDecentralized Trials & Research Alliance (DTRA) [9] は、共通の基準とKPIの確立、教育の提供、ベストプラクティスと価値の証拠共有に取り組んでいます。 同様に、Digital Medicine Society (DiMe) は、デジタルエンドポイントのライブラリ[10]と、デジタル臨床指標とリモートモニタリングを開発・展開するためのプレイブックを作成しています[11]

残された障壁の除去

これらは、臨床研究のエコシステムの中で大きな動きがあることを示しています。しかし、DCTが提供する機会を完全に把握し、業界全体の慣行を導入することができるのであれば、まだやるべきことがあると考えます。

臨床試験は患者にとって不慣れな体験であり、テクノロジーへの慣れやアクセスも千差万別であるため、参加者のトレーニングやサポートを改善し、ユーザーインターフェースを特定の患者集団に合わせて調整する必要があります。

また、グローバル規制ガイダンスにも大きなばらつきがあり、複数国での試験で分散型アプローチを実施する場合、試験デザインと計画におけるさらなる複雑さを招く恐れがあります。より統一されたアプローチであれば、国際的な試験実施も簡素化されるでしょう。

また、DCTにおける患者の安全とデータの完全性に対するリスク、そしてこれらのリスクを効果的に軽減し管理する方法についての理解は限定されます。従いまして、リスクを効果的に特定・評価し、異種データソースを集中監視手法のもとにまとめ、すべてのデータソースと関連プロセスの効果的なモニタリングを行うために、DCTと並んでリスクベースの品質管理(RBQM)とセントラルモニタリングを引き続き導入する必要があります。

また、治験依頼者は、ベストプラクティスや価値のエビデンスを共有し、社内各部署の専門知識を結集してDCTの運用モデルを開発することにより、懐疑的な見方に対する社内の課題を克服する必要があります。

私たちはすでにDCTの導入に向けて大きく前進しています。今こそ、最後の障壁を打ち破り、患者の安全とデータの完全性を維持しながら、より患者中心の効率的な臨床試験を実現する時です。

私共がどのように製薬会社やバイオテクノロジー企業のパートナー企業に対して、DCTアプローチの導入、リスク評価、集中型アプローチによる遠隔監視をサポートしているか、ご興味がある場合は、是非お問い合わせください。

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